最近ずっと、今更になって人並みの人間にならなきゃいけないって焦っている。人並みに働いて、人並みに遊んで、人並みに友達や家族がいて、人並みに食べて、人並みに生活して、人並みに幸福にならないといけない。

なんで今更生きようとしてるんだろう。これが大人になるってことなのか、時間が解決するってことなのか。自分は死ねないって、いよいよわかってしまったのかもしれない。

不幸なまま、全部呪うように死んでやると思っていたりした。不幸だったんだからこれからきっとすばらしい何かが起こると信じたりもした。方向は違えどどっちも自分なりの復讐だった。

でも死ねなかった。痛かったし、怖かった。なんの才能もなくて、何事も成せなかった。なにもできなかった。

どうせ死ぬからいいやって思えたから生きてこられたのにもう逃げ道がなくなってしまった。

いざ生きることを考えてみたら、同い年の人たちと比べて自分はあまりに不健康で、まともな家庭もなくて、世間知らずで、無知で、後ろ暗いことばかりだ。ぜんぶ嘘で誤魔化して人並みのふりをしてきたせいで、なにもかも空っぽだ。

 

自分の生まれ育ちは人並みに幸せではなかった。もう24歳になって、何もかも遅すぎた。死ぬにも、生きるにも。今から人並みに幸せになろうとするなら、なにもかも無かったことにするしかないんだ。

なにもないような顔をして、悩みの一つもないような言葉で話して、へらへらと笑うしかないんだ。つらかったことへの報いなんてない。もうわかってしまった。あきらめないといけないんだ。

痛かったことも苦しかったことも、誰にも理解されなかった。誰にも話せなかった。もうずっとこのままなんだ。

いつか報われるって信じてたのに、その信仰すら捨てないといけないんだ。それしかなかったのに。もう自分にはなんにもない。やっぱり死んじゃいたいなあなんて、まだ諦めきれていないから、きっと死ぬまで手遅れのままだ。

呪い

今、生きてきた中で1番時間がある毎日を過ごしている。考え事をする時間が増えた。小さい頃からいくらでも考え事をして過ごせる方だったけど、大学生まではいろんなことに時間に追われて毎日を消費していた。

毎日いろんな夢をみる。ときどき、自分を産んだ人が出てくる。優しくされて、ああこれは夢だなと気づくのは滑稽だなと思う。

 

 

自分が死ぬまでこの影はずっと離れないことはわかっている。無力。失望。拒否。そんなものが長い年月をかけて心臓に住み着いて、どうにもならない事実になった。それならもう全部捨てて無かったことにできたらどんなにいいかと思う。憎むのはつらい。

 

痛いのもこわいし生きてるのもこわい おかねもないし体力もないしやる気もないし目標もない いつもねむいのに眠れない たくさん電話がくる 働けないから人権ない 病院にもいってない 毎日雨ふってる ともだちにも会ってない ともだちいたっけ? 具合がわるい こわい みんな怒っている 絵も描けない

奪う

「自分には貴方のことがわかるよ」なんていうのはわかってないから言えることで、見下しているから言えることで、尊重など微塵もしていないから言えることだ

そうでなければ言えないだろう、結局人は生まれてから今の瞬間まで一緒だったことなんてたった一瞬すらないし、耳に残る音や今でも心臓を潰す言葉や吐き気のする匂いを伝えることなどできないし、文字や言葉なんてのはただ圧縮と簡略化でわかりやすくするツールであって本当のことは自分から外には出ていかない。ましてやそのツールを使って何かを明かしたわけでもないのに何がわかるんだろう?何も教えてはいないのに。わかるのなら寧ろこっちに教えてくれよ、自分はこうして自分だけでも思い出せる圧縮された形でここに書き出すことができるようになるにもやっとだったのに。

言わないことが正解、死ぬまで墓まで。何度も誓ったことをほんの少し侵しては酷く悲しい思いをして、孤独は深まるばかりで、また刻みつける。17歳の日、自分にかけた呪いはどこまで行っても正しくて、傷を増やしているのは今の馬鹿な自分だ。誰も信じてはいけない、心を許すなどあってはならない、隙を見せれば搾取するのが人間で、微かに近しいものを感じて油断と期待をしたときがいちばん危ない。共感や同情に見せかけた言葉は達観した己を信じてやまない者の自慰行為で、「見通しのいい場所」に座っている実感と快感を得るために平気で他人の領域を侵す。人間の脳が想像できることは結局自分が経験したことがある事象だけ、そこに他人の年月やその心の波や頂上や地底を勝手に都合良く想像した形で当てはめる、「自分には貴方のことがわかるよ」、その軽薄な舌と使い物にならない脳ををミキサーにかけてぐちゃぐちゃに掻き混ぜてゴミ捨て場を漁るカラスに食わせてやりたい。そういう人間がもしこの文を目にするようなことが万一あっても勝手に搾取するだろう。化け物に言葉は通じない、物心ついた頃からわかっていたこと。どうあってもあるのは他人と他人、たとえ分かち合おうとしたとしてもそんなことは不可能だ、ましてや望んでもいなければその境界線に何かを及ぼすことなどできるはずもない。これだけは自分のもの、誰にも渡さず明かさずひたすらに隠して守ってきたもの、最後の砦の奥に潜めた心臓、自分の命を繋いできたもの。自称神のうぬぼれ、その肥大した欲の肥やしにするために赤の他人の命を奪うな、死ね化け物が