少し前の話だけど、祭りに行った。

本祭と前夜祭、後夜祭のあわせて3日間あるうちの2日目。本祭の日。前夜祭の日は誰かを誘って行く気にもならず普通に過ごしていたけど、夜になって電話がきた。遠くに住んでいる友人がこっちに来ているから明日お前も来いとのことで、久しぶりだなあと思って行くことにした。

 

次の日、友人達は早くから行って飲んでいたようだけど夕方くらいに行けばいいかと思っていた。そしたら昼過ぎに電話が来てはやくこいと急かされたから財布だけポケットに入れて行った。

3つ年上の友人2人がいて、他の人は仕事らしい。久しぶりに会った彼らは相変わらず明るくて楽しかった。会ってすぐ「半年くらい外に出てないみたいな顔色だけど大丈夫か?」と茶化された。友人たちは人並みに日焼けしていた。体質もあるけど明るい時間に外で走ったりしなくなったからますます日焼けしなくなったかもしれない。いろんなものをこれ食えあれ食えと買ってくれて、いろいろ一口ずつもらったらすぐお腹いっぱいになった。中にはハズレもあって、1袋500円もするシンプルな形のベビーカステラはタマゴボーロみたいにポソポソしていて、キャラクターの形をしているやつのほうがおいしいことがわかった。抹茶味のどら焼きは草の味がした。たぶん芝生ってこういう味だろうねって言ったらまさにそれだと笑った。

友人のうち1人はいつも会うと馬鹿にし合うのがお決まりで、その日は久しぶりにずっと馬鹿な話ばかりしていた。でもなんとなく人の心が少し読めるような自分より3つも大人な彼は就活どうこうとか、学校どうこうとか自分がうんざりしている話題を一切口にしなかった。この時期に好き放題にしている髪色を見れば誰もが突っ込んでくることだから、ありがたかった。最後に金魚すくいもした。先月お花見したときは5匹もとったのに、1匹しかとれなかった。とった金魚を水槽に戻すとき、「おまえそれ食うだろ、持って帰れ」と言われて爆笑してまたもめた。

 

帰り道、祭の音からだんだん離れていくとき、歩きながら「なあ、おまえさ、ほんと、元気でいろよ」と言われた。その日初めて聞いた真面目な声だったから適当に冗談で返していいのかちょっと迷った。結局自分はいつも元気だよと笑って返した。半袖で歩いている人を見てもう春が終わっちゃうなとぼやいたら、夏また来るからまた皆でバーベキューしようと言った。きっと最後のバーベキューだななんて勝手に頭に浮かんで、少し悲しい気もした。もうすぐ別れるという所で、「俺嫌だからな、ニュース見たらおまえ死んでましたみたいなの!」と冗談ぽく言われて本当にこの馬鹿なふりができる大人な友人は心を見透かしてるんじゃないかと思った。何で死ぬんだよ、とこっちも冗談ぽくかえしたら、金魚の食いすぎで!バイバイ!またな!と別れた。

 

誰にも相談事をしたことはないから、普通にしてるだけでも自分のそういう面がついに隠しきれないようになったのかもしれない。とも思うし、ただの冗談をそういう風に捉えてしまっているだけかもしれない。けど、自分が突然SNSも連絡手段も全部消して、どこにもいなくなったとき、誰か一瞬でも自分のことを思い出すことがあるんだろうか、と思った。